近年、求貨求車マッチングサービスは物流業界で一般的になっています。しかし、ここで注目すべきなのは、水屋事業を行う有名な上場企業がこのシステムを利用していないことです。一般的な考えと異なり、この企業はなぜこのような方針を取るのでしょうか?そこから我々の生き残る方法について考察していきたいと思います。
上場ってすごい?
上場とは
上場(IPO)とは、企業が株式市場に株式を公開し、一般投資家に株を販売することです。これにより、企業は公開株式を通じて資金を調達し、株主は株式を取得することで所有権を得ます。上場により企業は市場での株式売買を通じて、一般投資家から資金を調達することができるようになります。さらに上場を成功させると当然、企業の知名度や資金力は向上します。
IPOの成功率
IPOの成功率は市場の状況や企業の業績によって異なると言いますが、過去のデータによれば、成功するIPOの割合は約50〜70%程度であり、残りのIPOは時価総額の減少や市場での十分な関心を得られないなどの理由で失敗するようです。成功するIPOには、市場での需要が高く、企業のビジネスモデルや将来の成長性が投資家に魅力的に映るケースが多い傾向があります。このことからも上場を成功させる運送会社の偉業がどれだけ凄いのかお分かりいただけると思います。
大手上場企業の配車に学ぶ
自社の情報を秘密に
求貨求車マッチングを利用しなくても、彼らの水屋事業はなぜ売上を伸ばすことができるのでしょうか?実際に彼らは自社の情報だけで勝負しています。自社で集めた情報をうまく出し入れすることで、自社の強みを維持しています。つまり、自社の情報を秘密にすることが、利益につながることを知っているということなのです。彼らは、お互いの期待や要求を理解し、効率的かつ信頼できる取引を築くことに重点をおき、安定した売上が確保できるようにしているのです。
情報の価値を知る
彼らは、公開されている情報よりも、既存の信頼関係をつかって仕入れた自社だけの情報に価値があることを知っています。彼らが取っている戦略は、一見非効率なように見えるかもしれませんが、機密性の高い情報をうまく扱うことによって自社の独自性を維持し、安定した成果を上げています。求貨求車マッチングが主流とされる中で、逆行するようなアプローチを取り続けてきたことで、彼らは単に売上増加だけでなく、多くの取引パートナーシップを構築し、長期的なビジネスの安定性を築き上げたのです。
実証実験
求貨求車がなくても
ある小規模の水屋が、一つの仮説を立て、それを試験的に実行しました。それは大手上場企業のように、求貨求車マッチングを利用しなくても、配車を円滑に行うことができるかもしれない、という仮説でした。求貨求車マッチングを利用することが当たり前になった業界で、これを解約することでどんな損失が出るのか恐れていましたが、そんな心配は要りませんでした。結論から言うと、求貨求車マッチングがなくても配車で売上をあげることはできたのです。
機密性の高い情報
さらに驚いたのは、求貨求車マッチングを使わなくなった月の売上と利益が、前年同月を上回るという結果が出たことです。景気の影響などもあるため、これだけに起因するものだとは言えませんが、例年よりも取引先の協力が得られやすかったという体感的な感想もありました。実際に「求貨求車マッチングを解約する」と取引先に通知して回ったあと、荷物や空車の情報が増えたことからも、その水屋からしか得られない情報によせられている期待の大きさが分かります。
顧客関係の重要性
5:25の法則
顧客離れを5%改善すると、利益が25%回復するという5:25の法則。小規模の水屋の例はこれに当たります。求貨求車マッチングを使っていたときは、情報を掲載する分、取引先に伝える情報が減っていました。つまりこの分が、この水屋の顧客離れに当たります。求貨求車マッチングをやめることで、これが改善したわけだから、利益がその分回復した、というわけです。実際のところ25%も回復したのかは分かりませんが、前年同月を上回ったということからその効果が本物であるということが伺えます。
既存取引先
広く公開する求貨求車マッチングは、多くの同業者に情報を見てもらえるから、荷物も傭車も見つかりやすい。そんな風に思われてきました。しかし、実は、求貨求車は掲載した情報を見ている相手にこちらから接触することができません。つまり、どこからも連絡がこなければ荷物もトラックも見つからないのです。それに比べ、いつもの配車なら、こちらから取引先に電話して、相手の反応を確認しながら、交渉することができるので、既存取引先さえ大事にしていれば何とか荷物もトラックも見つけられます。求貨求車に頼りすぎてこんな大切なことを忘れてしまっていませんか?
まとめ
運送会社が生き残るために必要なのは既存取引先とその数です。そしてその取引先との信頼関係の深さ。これが他社との差を広げ、困難な時代を勝ち抜くためのサバイバル術になります。
お知らせ
『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』(国土交通省ウェブサイト資料)が交付決定されました。下請けに対する規制が厳しくなると繁忙期のトラックさがしも一層難しくなりそうです。そこで、新たに協力会社と知り合う新規開拓をするのも一つの手です。運送業の新規開拓の新しい形、配車ステーションについて詳しくはこちらをご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。