運送会社が長期的な顧客関係を重視すべき理由とは?

 運送会社が長期的な顧客関係を重視すべき理由とは?

とある大手マーケティング会社が2023年に調査したデータに「パフォーマンスの高い営業担当者の90%は長期的な顧客関係を重視している」というものがありました。このデータから「これからの配車担当者に求められるパフォーマンスとは何か?」を考察してみようと思います。

顧客に関する法則

1:5の法則

1:5の法則は、新規顧客を獲得し、売買を成立させるまでのコストが、既存顧客に販売するコストの5倍になるという原則です。つまり簡単に言うと、新規の取引先を獲得するときは相応のコストがかかってしまいますよ、ということです。新規で荷主や外注先を獲得しようとする姿勢は積極的に見えるのですが、それなりにコストをかけなければうまくいきませんし、この法則を参考にするのであれば、確実に収益を得ていくために既存の荷主や外注先との関係をしっかり守っていくほうが良いのではないか、ということです。

5:25の法則

顧客離れを5%改善すると利益が少なくとも25%改善するという法則があります。さいきんご無沙汰になっている荷主や外注先はありませんか?そこに電話して関係を作り直せば利益が25%も改善するかもしません。疎遠になった理由はいろいろとあるかも知れません。それでも一度は信用取引をしていた相手。一から信用をつくっていくことに比べれば時間はそこまでかからないのです。もう一度良い関係性がつくれないか、試しに取り組んでみる価値はありますね。

なぜ今顧客関係なのか

収益性の改善

デキる営業担当者の大部分が長期的な顧客関係を重視しているのは、1:5の法則や5:25の法則など、既存顧客との結びつきの重要性を理解しているからです。燃料代も高止まりしていますし、24年問題への対応など多くの運送会社が苦境に立たされていることと思います。そんなときこそ他業界で活躍する営業マンから学び、配車担当者は目先の結果よりも持続的な収益を追うようにして、既存顧客との関係から生まれる利益を重視すべきなのかもしれません。

価格競争からの離脱

1:5の法則では、新規の顧客を獲得するためには既存顧客の5倍のコストがかかると言っていました。このコストには、サービスを購入しやすくするために安売りするときの費用も含まれています。まず重要なのは、このようなバカげた価格競争を自分から仕掛けていかないということです。あなたの会社のサービスを正当に評価し、適正な価格で発注してくれる顧客が既に存在するのであれば、そこを大事にするべきだということですね。

配車の利益率

利害の一致とは

配車における利益率は、利益をもらった運賃で割ることで出します。自社便で走るときの場合は、より高い運賃の仕事を見つけることで利益が最大化します。一方、傭車に出す場合は、差益を多く確保することが利益率向上につながります。だからといって沢山差益をだせばよいというものでもありません。重要なのは外注先との利害調整です。利害が一致するパートナーを見つけることで、ピンハネと言われることなく良い付き合いを持続できます。

持続可能な関係性

利害が一致するパートナーを見つけるためには、トレードオフを理解し、実行することが重要です。トレードオフとは、何かを得るためには何かを犠牲にしなければならないという考え方です。つまり、すべてを手に入れることはできないということです。良い取引は常にトレードオフのバランスから生まれます。自社にとって譲れない条件とは何か?逆に譲歩できる条件とは何かを明確にし、これらの条件が一致するパートナーを見つけ出し、長期的な取引を築くための交渉を行うことが大切です。

営業の重要性

配車における手配と営業の違い

配車業務は一般的に、荷物の受注やトラックの手配といった業務と、相手との取引条件を調整するような営業活動に分かれています。しかし、この2つの業務は主に電話を通じて同時に行われるため、受発注の業務と営業が複雑に絡み合い、混乱することが多くあります。特にまだ慣れていない経験の浅い担当者は、これが理解できないため荷物やトラックの情報を取りこぼしてしまうことがあります。

企業の7割が営業に課題

中小企業の約7割が営業に課題を抱えているというデータがあります。このことからも分かるように、営業が得意な人材はそれほど多くはいません。ただし、これは新規顧客獲得の営業活動に関する話です。実は配車における営業は守りの営業であり、既存顧客とのいい取引ができるように電話で周回するルート営業のようなものです。しかし、この事実を見誤ってしまい、新しいところばかりを攻め続けることで顧客関係を損なってしまう運送会社は少なくありません。

求貨求車は新規獲得になるのか?

求貨求車を頼る理由

求貨求車は自社のネットワークでは見つけることができない荷物や傭車を探し出すことができるサービスと思われがちです。でも実際のところ求貨求車は新規顧客獲得のツールのように使われることが多いです。新しいところにテレアポするのは勇気がいりますし、門前払いをくらうことが多いです。でも、「求貨求車を見た」と言えば相手は警戒心を解きます。そうです。同じ求貨求車サービスに加入しているというのは、新規営業をする際の免罪符になるのです。確かに困ったときの求貨求車サービスなのですが、このような使い方をしている人はきっと多いと思います。

求貨求車は本当に必要なのか?

何度も言ってきたように新規にはコストがかかり、持続性が得られるようになるまで時間もかかります。その時間を短縮できそうなツールとして注目され、ここまで普及してきましたが、そんな求貨求車にも当然デメリットはあります。例えば、情報が筒抜けになるので飛び越し営業をくらいやすい、というもの。また、便利で楽に手配ができるからといって求貨求車に頼りすぎて、既存取引を疎かにしてしまい、売上をへらしてしまうというもの。どちらも売上に響くダメージがあるデメリットです。これらのデメリットから生まれるリスクをうまくコントロールできるという会社もありますが、そんなやり方でうまくいき続けている会社を見たことはありません。

ネットワーク

情報の価値

あなたと数社しか知らない荷物情報と、求貨求車に載っている荷物情報、どちらの価値が高いと思います?例えば、傭車を探して対応しようと考える場合は、前者の荷物のほうが価値が高いと言えます。求貨求車の情報は広く知られてしまうため、利益を出すことが難しいからです。これは一つの例にすぎませんが、ビジネスの情報を公開するというのは、手の内を気前よく公開するようなものである、ということを再認識する必要があるでしょう。

ネットワークはつくるもの

便利なサービスが増えるのは良いですが、そのサービスが提供してくれるものの本質を見抜くことが重要です。求貨求車は事業者が用意したネットワークを借りるサービスです。でもこれまでの話からも分かるように、あなたの会社に持続的に利益をもたらしてくれるネットワークは、あなたが営業してつくっていくものなのです。つくるのが大変だからといって、安易に他者が用意したものばかりに依存していると、これまでつくってきたあなたの大切なネットワークを失うことになるかも知れません。

おわりに

「中抜きされた仕事は取りたくない」と言いつつも求貨求車の安い荷物はとる。「傭車が安く見つかる」と言って求貨求車に荷物を載せる。一見合理的なようでも、利害を考えてくれる協力業者の荷物を断り、長年協力してくれている傭車をないがしろにするこの行為は、あなたの会社が築いてきた顧客関係を損ね、得られるはずだった利益を失わせています。これは、手配を早く済ませることだけを重視する、配車担当者の怠惰心が生み出している現象だと言っても過言ではないでしょう。目先よりも長期的な顧客関係。業界の大きな転換期を控えている今だからこそ、パフォーマンスの高い営業担当者に学ぶべき姿勢があるのではないでしょうか?

お知らせ

『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』(国土交通省ウェブサイト資料)が交付決定されました。下請けに対する規制が厳しくなると繁忙期のトラックさがしも一層難しくなりそうです。そこで、新たに協力会社と知り合う新規開拓をするのも一つの手です。運送業の新規開拓の新しい形、配車ステーションについて詳しくはこちらをご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。