運送業界はよく多重下請け構造だと言われます。
この記事では、運送業界と多重下請け構造について解説します。
運送業界の多重下請け構造とは
「水屋はピンハネ業者」というような言葉を使ったり、聞いたりしたことはありませんか?
当然、下請け業者は元請けの受注金額より安い運賃を受け取ることになります。多重下請け構造になると下層の下請け業者が低賃金により労働条件が悪化することになるため、この構造の解消について議論されることがよくあります。しかし、一言に下請けと言ってはいますが、運送業の場合、日々の荷主からの受注数と自社トラックの台数がぴったり同じになることがないため、傭車の受発注と呼ばれる業務が必ず発生します。だから、「下請けに出す」というよりも「協力要請」という表現に近いのかもしれません。
多重下請け構造の問題点
しかし、多重構造のように委託契約が幾重にもなると、輸送業者の信頼性を低下させる原因になり得ます。業者同士の運送契約が連鎖的になると、品質管理が疎かになる可能性があり、結果として荷主に不都合な状況が発生します。特に、配送途中の破損などトラブルが発生した場合、その責任をどの業者が負うのかが不明瞭となってしまい、トラブル解決に時間がかかることがあります。
さらに、業者同士の契約によって運送サービスが提供されている場合の懸念点として、構造中の業者が倒産したり業継続性が低下した場合の影響も無視できません。委託元が倒産する貸倒れの場合、連鎖的に影響が起きることは避けられませんし、委託先の事業継続性が低下した場合はその対応に頭を悩ませなければなりません。
だから、取引業者の選定や、与信管理というものが重要になります。真に解決すべき問題は多重下請け構造の解消にはないのかもしれません。多重になる理由は何かを考えるとその答えが見えてきます。委託された業務に対しての責任に対して、どのような認識を持っているのかが、信用力につながります。これを重んじない取引の繋がりがひとつでもあれば、その案件は多重構造になり得ますし、その逆に、信用と責任で繋がっている取引であれば、さほど多重構造にならない案件となります。
まとめ
これらのことから分かるように、運送業で本当に取り組むべきなのは、取引先との信用の構築です。しかし、少しでも効率化しよう、便利にしようと考えていくうちに、信用の構築が疎かになっているのではないでしょうか?便利と信用は両立できないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。技術と人の想いがうまく重なるとき、それは成されるのだと思います。