運送業界には1年365日の間に何度か繁忙期がやってきます。連休前、年末、年度末などですね。荷主さんや元請け運送会社さんが頭が痛くなる時期です。当然、自社トラックだけでは輸送力が足りないので傭車先に頼んで何としても運ばなければならないのに、運んでくれるトラックが見つからない。こんな状況を防ぐ方法はないのでしょうか?今回は配車担当者の繁忙期対策について考えていきます。
繁忙期のメカニズム
運送業界の繁忙期はどうして起きるのか考えたことはありますか?「忙しくなるからに決まっているだろう!」確かにそうなんですが、どうしてこうもみんなが忙しくなるのかを深く考えれば様々な対策を講じるのに役に立つはずです。例えば荷主さんの立場になって想像してみると、下に列挙したような心理がはたらくのではないかと予想できますよね?著名な心理学者たちが著書で言っていますが、人は100円もらってお得な思いをするよりも、10円損をするかもしれないことを避けてしまう、損をしたくない生き物だそうです。ではこれらの心理がはたらくと仮定して繁忙期対策について考えてみましょう。
予測に基づいた対策
消費者心理や取引先の担当者の心理を理解すれば、あなたにとっての繁忙期予測ができるはずです。あなたの取引先がどんなときに大量に運んで欲しいと思うのか考えるのです。例えば玩具メーカーが荷主だとすれば、こどもの日、クリスマスなどは消費需要が高まることが予測できます。需要が高まるときはモノが売れるので輸送需要も高まりますが、当然こういう予測はメーカーも行うので、売れる前にある程度の売れ行きを予測し、早めにモノを動かすのです。予測は自分たちが運ぶモノ、運んでほしいモノに関わる、利害関係者の心理を想像しながら行う方が良いということが分かります。前年、前々年など過去のデータを参考にするのも良いですが、現在の利害関係者たちの心理がどのように動くのか、状況観察を怠らないようにすると良いでしょう。
閑散期に対策
「閑散期に対策なんて、そんなことは分かっているよ」と言われそうですね。しかし、その対策が本当に十分なのか今一度振り返って確認してみると良いでしょう。スタンダードな対策は繁忙期に運んでくれるトラックを閑散期に確保しておくというもの。その方法は様々ですが、閑散期だからといって邪険にせず、空車情報をもらった会社のトラックをできる限り使うようにすることが一番かんたんな方法です。その他にも閑散期にできる限り多くの運送会社と友好関係を築いておく、など既存取引関係を充実させておく方法があります。トラックの確保はかんたんなようで意外と難しいものです。これも相手の心象を損なわないようにすることが重要で、利害関係者としてどれだけ相手を大切にするかがポイントですね。
取引関係の見直し
基本的に自社のこと、自分のことばかりしか考えられない人はビジネスで大成できません。こんな風に言うと「稼ぐな」「儲けるな」と言われていると勘違いしてしまう人がいると思いますが、そうではありません。稼いで結構、儲けて結構なのですが、大きく稼ぎ儲ける人は利害関係者がどんなものを求めて、どういうサービスを欲しているのか真剣に考えている、ということを伝えたいのです。自分勝手な発言を行い、自分の身の回りのことしか見られないようでは、誰からも求められません。まずはこのようにならないように気を付けましょう。そして、日頃から付き合う相手をよく観察しておくことです。逆に相手がこのような自分のことしか考えられない人だった場合、見た目の売上は大きくなっているようでも、損をさせられていることがあります。自分の振る舞いに気をつけつつ、ビジネスパートナー選びにも気を配りましょう。
苦しい戦いと努力
荷主さんはせっかくの稼ぎどきに割り増し運賃を払って利益を減らしたり、「運ぶことができなくて売れなかった」なんてことは避けたいはずです。前項でも言ったように人間は、得をすることよりも損をする痛みを避けたい生き物なのです。だからこそ、運送会社は荷主さんが損しないですむように立ち回ることで信用を勝ち取ることができます。ここでもイチオシは「定期便をつくっておく」という手段です。「毎日1台」とか「毎週3台」のように協力業者に定期的に協力をお願いしておくのです。閑散期にも必ず案件を出し続けなければならないので、配車担当者は苦しいと思いますが、繁忙期に確実に威力を発揮する方法なので、がんばって取り組んでみる価値はあると思います。こうすることで繁忙期に欠車せずにすめば、あなたの荷主さんからの評価が上がることは間違いなしです。
効率的なトラックさがし
効率的なトラックの探し方というと、他の業界の営業方法でもそうですが、数値的なものを出して理論的に考える人がいます。でも実際、配車の現場では数値では計れない要素が重要だったりします。たとえば1台のトラックを探すのに5社の協力会社がいる配車担当者と、20社の協力会社がいる配車担当者とでは、数値的に後者のほうが有利な感じがしますよね。でもいざ繁忙期になったとき「前者はトラックを見つけることができても、後者はできない」なんてことが起きたりします。こんなことになるのは、協力会社の担当者が感情をもった人間だからです。いくら協力業者の数が多くても、その相手との信頼関係が構築できていなければ肝心なときに協力を得ることができないのです。効率的にトラックを探したければ、理論や数値よりもまず先に協力会社との信頼関係を構築すると良いでしょう。
まとめ
他業種の営業職にも言えることですが配車には、数を競うように中身のないコミュニケーションばかり行うよりも、数は少なくても一件でも多く誠意ある取引を行うことが必要なのではないでしょうか?繁忙期も閑散期も苦しい場面はたくさんありますが、誠意ある取引を続けていれば、利害関係者との良い関係性が解決してくれるはず。繁忙期対策を精神論で片づけてしまうようで気が引けますが、苦しくても楽をせず誠実に努力すると必ず報われるので、一件でも多くの信頼関係を築けるように努力を続けていきましょう。
お知らせ
『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』(国土交通省ウェブサイト資料)が交付決定されました。下請けに対する規制が厳しくなると繁忙期のトラックさがしも一層難しくなりそうです。そこで、新たに協力会社と知り合う新規開拓をするのも一つの手です。運送業の新規開拓の新しい形、配車ステーションについて詳しくはこちらをご覧ください。
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