デジタル化された業務と効率化されていない業務とでは、ビジネスのスピードに大きな差が生まれます。当然スピードが早ければ早いほど、大きく利益を出し、成功に近づくことができます。
しかし、ツールの導入に踏み切ることは、企業に多くの利益をもたらす可能性がある一方で、変化への不安やためらいを感じてしまう方もいるでしょう。そこで今回は、小規模の運送会社でもデジタル技術を容易に導入する方法を解説します。費用をかけずにできるものもあるので必見です。
トラック運送業は遅れている?
「運送関連の仕事はデジタル化が進んでいない」とよく言われています。実際はどうなのでしょうか?総務省が発表した、「我が国におけるデジタル化の取組状況」を参考に説明します。
現状:運輸業はデジタル化の取組が遅れている
総務省の2021年のデータ、「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」の「デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本:業種別)」を見ると、運輸業・郵便業は、『2018年度以前から実施している』が12.1%、『2019年度から実施している』1.8%、『2020年度から実施している』3.0%、『実施していない、今後実施を検討』16.9%、『実施していない、今後も予定なし』が66.2%という結果になっています。
出典:「デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本:業種別)」(総務省)
現状:企業規模で異なる意識の差
運輸業・郵便業は、現在、デジタル化の取組を実施している企業が16.9%、実施していない企業が83.1%と、ほとんど取組が進んでいないという結果でした。また、下図「デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本)」をご覧ください。企業の規模別で見ると、大企業は『実施している』が42.3%、『実施していない』が57.7%となり、中小企業は『実施している』が13.8%、『実施していない』が86.2%となっています。このことから、大企業と中小企業には、デジタル化の取組に対する意識に大きな差があることが分かります。
出典:「デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本)」(総務省)
結論:トラック運送業は遅れている
トラック運送業は、99.9%が中小企業です。(出典:「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(経済産業省))よって、トラック運送業はデジタル化が遅れていると言えるでしょう。
DX推進とは
DX推進とは、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けて、あらゆる取り組みを加速させることを指します。元々ある業務をデジタル化するだけでなく、組織のあり方や働き方の変革も含まれます。
DX推進のメリット
DX推進の主なメリットを3つご紹介します。
業務効率・生産性の向上
DX推進により、業務プロセスやタスクの自動化、データの分析などが可能となり、業務の効率・生産性が向上します。ヒューマンエラーも減り、質の高い仕事ができるようになります。単純作業をデジタル化すると、重要度の高い業務に力を注ぐことができます。
ビジネスの変革
デジタル技術を活用し、新たな事業や既存ビジネスモデルの変革に取り組むことができます。新たな技術やビジネスモデルの採用により、新たな市場機会を発見し、既存の競合に対抗するための差別化を図ることができます。
コスト削減
業務効率の向上はコスト削減にも繋がります。効率が上がることで従業員の数を増やす必要が無くなる、減らすことができるので、人件費を削減できます。
小規模の運送会社でもできるデジタル化
国土交通省が紹介している運送会社のDX事例は次の通りです。
(出典:「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」(国土交通省))
しかし、そんな思い切ったDXの前に誰でも簡単に取り組めるITツールを使用した効率化を三つ紹介します。
配車帳のクラウド化
どこでも配車帳を使っていると思いますが、まだ手書きの配車帳やノートを使っているという会社は、まず配車帳をクラウド化することから挑戦してみてください。方法は至って簡単です。無料で使えるGoogleのスプレッドシートを利用します。スプレッドシートはエクセルと同じなので、車番連絡票を作成したことがある人なら誰でも使えます。また、複数の配車担当者がいる場合、それぞれのアカウントで一つの配車帳にアクセスして同時編集ができるので便利です。さらにクラウドなので、外出先で配車帳にアクセスして確認や編集をすることもできます。
FAXのペーパレス化
FAXのペーパレス化の方法は二通りあります。一つはPC専用のFAXソフトを購入する方法。しかし、FAXモデムという割と古い技術のパーツを使用する方法なのでデジタル化とは言いづらい方法です。もう一つは月額のインターネットFAXを利用する方法です。月額基本料金が1,000円前後でクラウドで送受信ができるサービスを利用します。今まで使ってきた番号で受信したい、という人はNTTのボイスワープを契約して、FAXをインターネットFAXの番号に転送すれば、これまでの番号宛のFAXをインターネットFAXで受信できるようになります。これも最大のメリットはクラウドであることです。複数担当者で同時に受信データにアクセスしたり、外出先で確認したりできます。
クラウドPBX
これは費用が割と必要になるので、費用対効果が得られる会社に限られる方法です。クラウドPBXは社内の固定電話とスマートフォンを内線でつなぐことができる技術です。簡単に言うと、アプリをインストールすることで、スマートフォンを社内の内線電話機にできるということです。つまり、そのアプリをインストールしたスマートフォンであれば、外出先から会社の代表番号をつかって取引先に電話することが可能になるのです。もちろん電話料金は会社の代表電話宛に請求されます。テレワークや遠隔地の配車担当者を採用するときなど、様々な活用シーンがありそうです。
デジタル化を進める際の流れ
新しい技術を効果的に導入するためには、さまざまな要素を考慮しなければなりません。具体的な手順を説明します。
①課題の明確化
まずはじめに、自社の課題を明確にしましょう。どの業務プロセスを改善し、どの課題を解決したいのかを洗い出します。これまでに起きたミスを調べていくうちに、「こうだったらよかった」ということが分かるようになります。それを列挙していけば改善したい課題が見つかります。
②予算の設定
導入にはコストがかかるものがあります。無理のない範囲で予算を設定するといいでしょう。費用対効果を考えるときは、それによって得られる利益があるのかどうかをシビアに考えましょう。
(例:インターネットFAXの導入によって、相手からのFAX待ちのために発生していた残業がなくすことができた。)
③リサーチ
利用可能なツールをリサーチしましょう。オンラインの評価や比較サイトを調べて、コストと機能のバランスが良いものを探してみましょう。
④監視と改善
ツールの導入後、定期的にパフォーマンスを監視し、利用者からのフィードバックを収集して改善に活かします。課題がどの程度改善できているか確認し、できていなければ新たな改善策を講じましょう。
デジタル化を推進する際のポイント
デジタル化の推進は、社内全体の協力が必要になるから難しい。そこで、デジタル化を成功させるためのポイントをご紹介します。
使いやすいものを選ぶ
システムを導入しても、実際に運用する社員が使いにくいと感じれば、効果がありません。日常生活で使い慣れているものなど、実際に使う人が感覚的に受け入れやすいものが良いでしょう。
変化を受け入れやすい環境をつくる
システムの導入は、社員の仕事に変化を生みます。基本的に人は変化することに耐性がありません。しかし、逆に考えれば、一度変化すると元に戻そうとは思わなくなるということです。移行期間など、工夫して変化を受け入れやすい環境を整備するとよいでしょう。
まとめ
今回の記事では、運送会社がデジタル技術を活用するメリット・導入ポイントについてご紹介しました。DX推進には初期投資が必要だったり、社内全体の協力が必要だったりと、沢山の労力が必要かもしれませんが、長期的にはこれらの方法を通じてコスト削減が実現し、組織の持続可能性と競争力を向上させることも可能です。まずは自社のできる範囲でいいので、あまりお金をかけずに済むデジタル化を進めてみてはいかがでしょう。
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物流ウィークリーにインタビュー記事が掲載されました
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